加島美術が570点の入札会、奇想の画家や暁斎・暁翠、清方門下ら

【銀座新聞ニュース=2023年5月19日】加島美術(中央区京橋3-3-2、03-3276-0700)とBSフジ(港区台場2-4-8、フジテレビ本社ビルメディアタワー)は5月20日から28日まで第14回美術品入札会「廻-MEGURU-」の下見会を開く。

加島美術で5月20日から28日まで開かれる第14回美術品入札会「廻-MEGURU-」の下見会のフライヤー。

「廻」は2019年からはじめた誰でも参加できる日本美術に特化した入札型オークションで、今回は古画、近代絵画、新版画、洋画、筆跡、工芸品など約570点を出品する。最低の入札価格は3万円から。

今回の特集では、日本美術界の中で強烈な異彩を放つ奇想の画家・伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう、1716-1800)、曾我蕭白(そが・しょうはく、1730-1781)、長澤蘆雪(ながさわ・ろせつ、1754-1799)をはじめ、文人画の大家・渡邉崋山(わたなべ・かざん、1793-1841)とその高弟・椿椿山(つばき・ちんざん、1801-1854)を取り上げる。

また、幕末・明治に人気を博した河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい、1831-1889)とその長女・河鍋暁翠(かわなべ・きょうすい、1868-1935)や、鏑木清方(かぶらき・きよかた、1878-1972)とその門下にも焦点を当てる。

さらに、円山派の祖で、江戸後期の絵師、円山應挙(まるやま・おうきょ、1733-1795)や岡倉天心(おかくら・てんしん、1863-1913)の門下の菱田春草(ひしだ・しゅんそう、1874-1911)、同じく門下の横山大観(よこやま・たいかん、1868-1958)、棟方志功(むなかた・しこう、1903-1975)、陶芸家の河井寛次郎(かわい・かんじろう、1890-1966)など大家の作品も出品する。

「奇想の画家」とは、「アートスケープ」(2023年5月15日号)の太田智己さんによると、日本美術史研究者で、東大名誉教授の辻惟雄(つじ・のぶお)さんが「奇想の系譜」(1970年、美術出版社)で江戸時代の画家、岩佐又兵衛、(いわさ・またべえ、 1578-1650)、狩野山雪(かのう・さんせつ、1590-1651)、伊藤若冲、曾我蕭白、長澤蘆雪、歌川国芳(うたがわ・くによし、1798-1861)の作品と伝記を、「奇想」のキーワードを通して論じた。

「奇想」は「因襲の殻を打ち破る、自由で斬新な発想」を意味するとされ、取り上げられた画家たちは表現主義的な傾向をもち、作品はエキセントリック、幻想的、グロテスクなどと形容されるものが多い。それまでの近世絵画史研究では、その歴史的展開が、流派やジャンル(狩野派、円山四条派、文人画など)を中心に認識されて語られていた。

これに対して辻惟雄さんは、流派別史観では傍流扱いされていた画家に焦点を当て、流派の枠を超えた「奇想」という概念のもと、彼らを江戸時代絵画史の重要なひとつの系譜として位置づけることで美術史研究に新しい視点をもたらした。また、当時の美術史研究では知られていなかった彼らの新たな作品を、写真図版とともに多く紹介した。これ以降、「奇想」の画家が取り上げられることが増えている。今回は「奇想の画家」を代表する伊藤若冲、曾我蕭白、長澤蘆雪の作品約10点を出品する。

「特集 崋山と椿山、その周辺」として、江戸後期、谷文晁(たに・ぶんちょう、1763-1841)の門下で画技を磨いた渡邉崋山と椿椿山を取り上げる。渡邉崋山は自然観察と写生を主としつつ、西洋や中国の技法を取り入れた独自の画風を確立し、渡邉崋山を慕った椿椿山は、その画風を受け継ぎながら、豊かな装飾性を備えた様式を完成させた。当時の文人画に新生面を切り拓いた渡邉崋山と椿椿山に加え、両者の流れを汲む同時代の画家たちの作品も出品する。

「特集 暁斎・暁翠」では、幕末・明治を代表する河鍋暁斎は歴史画、宗教画、風俗画、風刺画などあらゆる画題を描き、ユーモアと反骨精神に富んだ作品群が現代も支持を集めている。また、近年は暁斎の長女・河鍋暁翠の作品も注目されている。暁翠は父の絵手本に学び、狩野派や土佐派・住吉派などさまざまな流派を吸収しながら自身の画風を構築した。優美で上品な作品に加え、父親譲りの勇壮な筆遣いも見ものとしている。

「特集 鏑木清方の系譜」では、江戸情緒あふれる美人画、風俗画で一世を風靡した鏑木清方はその繊細で気品に満ちた画風、内面の美を描き出すような表現力が特徴で、多くの門人を育てたことでも知られている。今回は「清方門下三羽烏」と称される伊東深水(いとう・しんすい、1898-1972)、山川秀峰(やまかわ・しゅうほう、1898-1944)、寺島紫明(てらじま・しめい、1892‐1975)、さらに伊東深水に師事した岩田専太郎(いわた・せんたろう、1901-1974)ら鏑木清方の系譜が感じられる作品20点を出品する。

「廻」は美術品を売却したい人から作品を集約し、国内外約2万人の美術品愛好家をはじめ、購入を希望される人に作品を紹介し、出品者が自ら入札価格を設定できる。下見会の期間中は、ギャラリーにて出品作品を展示するので、作品を実際に見ることができる。

28日18時が入札締切。加島美術にて入札結果を取りまとめ、30日の開札日に落札金額をウエブサイトで公開する。下見会は入場無料。加島美術とBSフジが運営するネットオークション「廻-MEGURU-オンライン」に会員登録すると、無料のウエブ(Web)カタログを見られる。