丸善WABPで西洋の製本特集、ユゴー「せむし男」ムニエ装丁等

【銀座新聞ニュース=2016年9月28日】丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は9月28日から10月18日まで3階ワールド・アンティーク・ブック・プラザで「製本」を特集している。

丸善・日本橋店WABPで10月18日まで開かれている「製本」特集で出品している「ノートルダムのせむし男」。

丸善・日本橋店WABPで10月18日まで開かれている「製本」特集で出品している「ノートルダムのせむし男」。

「ワールド・アンティーク・ブック・プラザ(WABP)」は丸善や丸善グループの丸善雄松堂(ゆうしょうどう)書店(新宿区四谷坂町10-10、 03-3357-1417)など世界11カ国から22社のアンティーク・ブックショップが集合して開設したもので、2013年3月から毎月、テーマを決めてイベントを開いており、2015年6月から3週間程度に期間を短縮している。

今回は「製本ー洋古書装丁と革製本」特集で、四角い紙葉の表裏両面を使い、二つに折って綴じる冊子体ーエジプトの初期キリスト教徒から現在まで1800年以上、本の基本形を成してきた。聖書をはじめ、言葉の保存と利用の実用性を兼ね備え、もとは信仰の重要性を表わすのに革や装飾で重厚に覆われた製本は、書物の大衆化を経て、近代に至り、個人の所有と個性を際立たせる豪華美装丁本の世界が開花したという。今回の特集では、製本の歴史に関する本、近代美装本を取り揃えている。

ウイキペディアによると、ヨーロッパには製本を手作業で工芸的に行なう伝統があり、一般にルリユール(フランス語: reliure)と呼ばれる。羊や山羊、仔牛の革を貼り、さまざまな装飾を加えて美しく飾り立てる工芸的な製本で、昔は職人が行なっていたが、現在は趣味のひとつとしても楽しまれている。

同じく出品している「幻想の伝記」。

同じく出品している「幻想の伝記」。

こうしたヨーロッパにおける手製本の伝統は、キリスト教の出現により、神の言葉である聖書を大切に保存するために始まった。堅牢性から革で製本するだけでなく、信仰の重要性を印象付けるために、それらを豪華に装飾することも始められた。イスラムでもコーラン(イスラム教の聖典)を美しく飾り立てる習慣があり、それがイベリア半島経由でフランス、イタリアに伝わった。

ドイツのグーテンベルク(Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg、1398頃-1468)の印刷術の発明で書物が大衆化すると、たくさんある中の「自分が所有する1冊」を際立たせるために、装飾に紋章が取り入れられ、所有者の個性を強調する装丁が生まれた。その後、ぜいたくを嫌うプロテスタントの諸国ではこうした豪華な製本が廃れたが、宮廷文化が華やかだったフランスではその伝統が生き残った。こうした美しい私家版が高値で取引される古書の世界においては、(当時の所有者を表す)紋章のあるなしが重要で、紋章のないものは一気に価値が落ちるとされている

今回、出品されるのは、ベネチアの出版人、アルドゥス・ピウス・マヌティウス(Aldus Pius Manutius、1450頃-1515)刊「ギリシャ著名人26人書簡集」(全2巻合冊、サザーランド紋章入美装丁、1499年)、リュック・オリヴィエ・メルソン(Luc Olivier Merson、1846-1920)画、ヴィクトル・ユゴー(Victor,Marie Hugo、1802-1885)の「ノートルダムのせむし男」(全2巻、ムニエ装丁、1889年)、ジョン・ホーンビイ(C.H.St.John Hornby、1868-1933)が1894年に設立したアシェンデン・プレス(Ashendene Press)版「ダンテ著作集」(105部限定、WH・スミス工房装丁、1909年)。

英国のバジル・ヘンリー・ブラックウェル(Sir Basil Henry Blackwell、1889-1984)が1921年に設立した出版社、シェイクスピア・ヘッド・プレス「チョーサー著作集」(全8巻、ツェーンスドルフ工房装丁、1928年から1929年)、ジョルジュ・バルビエ(George Barbier、1882-1932)画、フランスの小説家、マルセル・シュオブ(Marcel Schwob、1867-1905)の「幻想の伝記」(120部限定、マリウス=ミシェル工房装丁、1929年)、オリヴィエ(Eugene Olivier、1881-1964)、ドゥ・ロトン(Robert de Roton、1885-1950)らの「フランス装丁紋章図鑑」(全29巻、2688図版入、1924年から1938年)。

フレンチ(H.D.French)、ロジャーズ(James Webb Rogers、1822-1896)、レーマン=ハウプト(Carl Ferdinand Friedrich Lehmann-Haupt、1861-1938)共著「アメリカ製本史」(1941年)、マリニス(Tammaro De Marinis、1878?1969)の「15ー16世紀イタリア美装丁」(500部限定、全3巻、1960年)など。

開場時間は10時から20時(最終日は12時)まで。