ポーラ銀座で田原桂一「手」遺作展、6日に急逝

【銀座新聞ニュース=2017年6月8日】ポーラ・オルビスホールディングス(中央区銀座1-7-7、ポーラ銀座ビル、03-3563-5517)が運営するポーラミュージアムアネックス(ポーラ銀座ビル3階、03-3563-5501)は6月9日から7月9日まで田原桂一による「Les Sens」を開く。

ポーラミュージアムアネックスで6月9日から7月9日まで開かれる田原桂一の「レ・サン(感覚、Les Sens)」の会場風景。

6月6日に急逝した写真家の田原桂一(たはら・けいいち)が2015年にフランス・リヨンで発表した、「手」をモチーフにした写真作品「レ・メン(手、Les mains)」を日本で「レ・サン(感覚、Les Sens)」と題して初めて展示する。会場では床一面に砂を敷き詰め、その上にレーザーを用いてプリズムの光を演出するなど、空間全体で楽しめる構成になっている。田原桂一の急逝により今回は遺作展となる。

田原桂一は1951年京都府生まれ、写真家の祖父の影響で中学時代に写真の技術を習得し、高校卒業後に劇団の「レッド・ブッダ・シアター」に参加し、照明と映像を担当し、1972年に劇団のヨーロッパ公演に同行してフランスに行き、日本の柔らかい光とは異なる、ヨーロッパ特有の鋭い光に衝撃を受け、パリにとどまり写真家として活動をはじめた。以来、2006年までパリを拠点とし、「光」をテーマに写真、彫刻、インスタレーション、建築と幅広く活動した。

写真の展示点数はわずか4点で、床には黒い砂が敷き詰められ、来場者は砂の上を自由に歩くことができるので、いわゆる写真展とはまったく異なった趣きがあり、「光」を撮り続けた田原桂一のあふれる才能を感じとることができる。

1973年から1976年の最初のシリーズ「都市」でパリの街をモノクロームで写し、日本とは違うパリ独特の光をとらえ、1973年から1980年のシリーズ「窓」で、「アルル国際写真フェスティバル」で新人大賞を受賞し、1978年に世界の巨星の肖像写真を撮影したシリーズ「顔貌」を発表、1979年から1983年の「エクラ」、1984年の「ポラロイド」などがある。

1978年にコダック主催フランス写真批評家賞、1984年に日本写真家協会新人賞、1985年に東川賞、木村伊兵衛賞、1987年にポルトガルのグルベンキア美術財団給費、1988年にフランスのニセフォール・ニエプス賞、1989年に日本のADC賞、1990年にフランス文化庁ヴィラメジチ給費、1993年にフランスと日本のシャトーベイシュヴェル財団大賞、フランス芸術文化勲章シュバリエを受賞している。

1994年に日本のADC賞、1995年にパリ市芸術大賞、1999年にリオン市化学工業地帯の「バレー・ドゥ・ラ・シミエ(Vallee de la Chimie)」プロジェクトを受賞、リオンの光のフェスティバルコンクール、2003年にパリのタラン・デゥ・リュックス オリジナリティー賞などを受賞している。

2009年に「株式会社KTP」を設立、2017年3月から8月までプラハ国立美術館で舞踊家の田中民(たなか・みん)さんを被写体とした個展を開いており、4月からはポーラ提供でテレビ朝日系「白の美術館」で出演者のポートレートを撮影していた。6月6日未明に肺がんのため東京都内の病院で死去した。

開場時間は11時から20時。入場は無料。