インド、感染下火、ワクチン接種で日本隔離10日に短縮(82)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2021年11月12日】10月に入り、インド全土はフェスティブムード、中旬からのドゥルガー女神(シバ神の妻)のお祭りはじめ、祭りが目白押しなのだ。

金沢市郊外の岩出町にある「ぶどうの木」レストラン(本店)。敷地内のぶどう園を全面ガラス窓から見渡せる自然豊かなイタリアンカフェは、万全の感染対策で営業中(店内写真は前号参照)。

特に、ドゥルガー・プジャ(儀式)は西ベンガル州を筆頭に東インドで盛大に祝われ、10日間の連休を利用して、ローカル家族が民族移動に等しく、行楽地に殺到する。例年、この時期は、観光聖地プリーは大賑わい、ホテル街も満杯で、一斉に押しかけた観光客でごった返す。

パンデミック(世界的大流行)とはいえ、幸いにも、現在は感染下火となり、街は活気を取り戻していることもあって、それなりの人出は見込めそうだ。ただし、全土第3波を警戒して、女神さまの偶像が祀られる仮天幕(パンダル)への参拝客の入場制限など、神経質になっている。

早いもので今年も余すところ3カ月、私的にはいろんなことがあって大変な9カ月だったが、いまだ予断は許さず、もうひと山ふた山超えなければ、次のステージには移れそうもない。

まだ国際線緩和の公式発表はないが、近い将来朗報との思わせぶりな情報も伝わっている。ぬか喜びに終わらぬような吉報であることを期待する。

10月3日付けデータでは、全土(28州8連邦直轄領、総人口約13億8000万人)の新規陽性者数は2万2842万人(累計3380万人、死者44万9000人)、当オディシャ州(Odisha、人口4600万人)は新規478人(累計103万人、死者8209人)である。

新規数が1桁台の州もウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)、チャティスガール(Chhattisgarh)、ラジャスタン(Rajasthan)ほか11州と増えて、感染者の8割近くが西のマハラシュトラ州(Maharashtra、新規2696人、累計656万人、死者13万9000人と最悪)と南のケララ州(Kerala、新規1万3217人、累計471万人、死者2万5303人で、新規数はトップ)に集中している。オディシャ州都からは1800キロ近く離れたはるか遠方で、当州は目下グリーンゾーン、活気に満ちた日常が戻っている。

店内のガラス張り天井から覗くぶどうの青天蓋。感染下火の今は、秋の収穫時でたわわな実が成り、賑わいを取り戻しているだろう。

ちなみに、全土のワクチン接種者は47%に達したが、2回完了者は17%にとどまる。現地メディアは1回接種者が9億人に達したと報じているが、2回完了者のパーセンテージが遅々として上がらないのが懸念される。

●邦人帰国関連情報
○【日本入国】10日間の隔離短縮、あなたは評価しますか?/週末ノマド「ダイスケ」

以前紹介したダイスケさんの動画から、ワクチンパスポートによる隔離短縮に関する新情報を得たので、紹介したい。

それによると、10月1日から日本政府の規定するワクチン証明書を所持していれば、隔離期間は10日に短縮されることになったが(初期6日以上の検疫局指定隔離者や、子ども、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ製以外の接種者は除外)、10日目に自主検査を受けて、陰性証明の提示が必要とのことだ。検査代が自費であることを考慮すれば、高くついてあまりメリットはないのではないかと、やや肩透かしの結果に終わったことを報告していた。

PCRテスト代は1万円から3万円以上と高額だし、2000円から3000円の安価なものもあるらしいが、公共交通機関が使えない中、最速で間に合わせるとなると、自ずと高額になるのではなかろうか。

メディアはこぞって、緩和と騒いでいるようだが、帰国当事者にとってはひじょうに使いづらく、ダイスケさん曰く、利用者は僅少になるだろう、メリットの少ない名ばかりの緩和というわけだ。

甘さ控えめのリキュール入りレアチーズケーキ(カラメルポワール)は美味だった。搾りたてのグレープジュースもおすすめ、パスタやピザの食事もでき、屋外ではぶどう味のアイスクリームも。見事なぶどう園はじめ、ブライダルコーナー、ハーブガーデン、石川県産大粒ぶどう「ルビーロマン」の直売所、洋菓子工房まで、敷地内の散策も楽しい。

別の回の動画では、欧州からの帰国体験コメントが読み上げられたが、ヨーロッパのどの国も、日本のように、陰性証明のフォーマットまで規定する厳格なところはないと、日本ならではの厳しすぎる水際対策に苦情を漏らしていた。日本は、規律とかいう段になると、異常に厳しい。インドはゆるゆるだし(上辺は厳格でも抜け道があるチート国)、ほかの先進国も、日本に比べると、甘めだ。

タイ在住者からの帰国コメントも併せて読み上げられたが、もうこのまま永久に帰れないかもしれないとの思いが一瞬よぎっただけに、帰国できて感無量とあって、身につまされた。海外在住者なら、例外なくよぎる思いではなかろうか。まだ私の場合は、帰れていないわけだから、無事帰国できた折には、感無量となることは間違いない。

○【新型コロナ】海外→日本帰国!帰国前準幅、入国手続き、隔離ホテルの流れについて/ゆきんこチャンネル

もうひとつ、こちらも以前紹介したインド在留の若い女性、ゆきんこさんの動画から。以前、終息まで見届けると宣言していた彼女だが、最近短期帰国を果たしたようで、そのリポートから。

それによると、入国から隔離ホテルまで5時間かかったが、この間の流れはスムーズで、各所で待ち時間はあるものの、なんの支障もなく、帰国者の受け入れ体制をここまで万全にしたことに、感激したと漏らしていた。スマホへのアプリのダウンロードや使い方も、マンツーマンで手取り足取り教えてくれるらしい。

ゆきんこさんの帰国時は、インド帰国者はまだ6日隔離を要されたが、ホテルも快適で苦痛はなかったとのことだった。不便なインドに暮らしていると、日本のホテルは超快適なのだ。シーツは清潔でベッドはふかふか、お湯がふんだんに出、トイレの水も勢いよく流れ、詰まりがない。だから、日頃生活レベルの低い(日本と比べてだが)彼女には、至極快適だったらしい。組織化された流れ作業と、快適な隔離ホテル、さすが日本と、まったく苦にならなかったようだ。

案ずるより産むが易し、頭でごちゃごちゃ考え、不安ばかり募らせていた私には、とても救いになる報告で、現実は考えているよりもっとたやすいものかもしれないと、少しほっとさせられた。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。2021年11月5日現在、世界の感染者数は2億4861万9512人、死者は502万9546人(回復者は未公表)です。インドは感染者数が3433万3754人、死亡者数が45万9873人(回復者は未公表)、アメリカに次いで2位になっています。

ちなみにアメリカの感染者数は4633万4856人、死亡者数が751555人(回復者は未公表)、日本は感染者数が172万4176人、死亡者数が1万8320人、回復者が170万2325人(ダイヤモンド・プリンセス号を含む)。インドの州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは2020年3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は2020年5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。2021年3月から第2波に突入するも、中央政府は全土的なロックタウンはいまだ発令せず、各州の判断に任せています。マハラシュトラ州や首都圏デリーはじめ、レッドゾーン州はほとんどが州単位の、期間はまちまちながら、ローカル・ロックダウンを敷いています。編集注は筆者と関係ありません)。