蔦屋書店で石井海音展、喪失の体験に向き合う

【銀座新聞ニュース=2023年3月4日】書店やレンタル店、フランチャイズ事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(渋谷区南平台町16-17、渋谷ガーデンタワー)グループの銀座 蔦屋書店(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3575-7755)は3月4日から24日までアートウォールで石井海音さんによる個展「あなたは何処へ」を開く。

銀座 蔦屋書店で3月4日から24日まで開かれている石井海音さんの個展「あなたは何処へ」に出品される「あなたは何処へ」(紙にアクリル絵の具、2023年)。

石井海音(あまね)さんの作品には、これまで「対話のできないモチーフ」と女性が登場し、その関係性は「まなざし」によって描かれてきた。モチーフには花やおばけなどが多く選ばれていたが、最近では無機質で記号的な物質が登場するなど、変化が見られるという。いずれも対話による意思疎通はできずとも、そのまなざしから両者がお互いを認識していたり、何らかの関係性や感情の交流があることが感じとれる。

モチーフの変化には、石井海音さんの個人的な喪失の体験が背景にあり、今回の作品は、過去の記憶を反芻(はんすう)するように生活する日々の中で描かれた。今ではもう二度とできない経験を、石井海音さんは生物のようにも見える記号と、それに重なる女性の像によって表現している。制作を通して、喪失の体験に向き合う石井海音さんの作品は、複雑でエモーショナルな情感を鑑賞者に引き起こさせるとしている。

石井海音さんは2022年9月の個展の際に、「絵画は物質感を持った複製不可能な形式である。これは私たち人間の命の形式と通じている。また、ディスプレイ上で見る画像や直線的で一方的な時間を持つ動画とは違って、絵画には循環的な時間があり、物質感を持つがゆえに対峙して見つめ合うことができる」と述べている。

石井海音さんは1994年大阪府生まれ、2018年に京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻を卒業、2020年に同大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻を修了、同年に京都市立芸術大学作品展で大学院市長賞を受賞、2022年9月に銀座 蔦屋書店で個展を開いている。

開場時間は11時から20時(最終日は17時)まで。入場は無料。