「家族」を描き、3本を1本化したような「新スター・ウォーズ」(228)

【ケイシーの映画冗報=2017年12月28日】本作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(Star Wars:The Last Jedi)は2015年の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(Star Wars:The Force Awakens)につづく2作目です。巨大兵器スターキラーをレジスタンスに破壊されたファースト・オーダーは、残された宇宙艦隊による大攻勢をレジスタンスに仕向けてきました。

現在、一般公開中の「スター・ウォーズ」シリーズ第8作目の「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」((C)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.)。

もともと劣勢であったレイア将軍(演じるのはキャリー・フィッシャー=Carrie Fisher)の率いるレジスタンスは、わずかな艦隊で決死の脱出を敢行します。かつて存在した、正義のジェダイ騎士団のシンボルともいえるライト・セーバーを使うことができたレイ(演じるのはデイジー・リドリー=Daisy Ridley)は、レイアの双子の兄で「最後のジェダイ」とされている英雄ルーク(演じるのはマーク・ハミル=Mark Hamill)が潜む辺境の惑星オク=トーにいました。

ルークにファースト・オーダーと戦うことへの協力をもとめるレイですが、心の深い傷を負ったルークは、レイの申し出をにべもなく断ります。ファースト・オーダー内でも葛藤が生じていました。ジェダイの訓練を受けながら、現在ではファースト・オーダーの幹部となったカイロ・レン(演じるのはアダム・ドライバー=Adam Driver ) は、レイとの戦いで、封印したはずの心の弱さを知られ、苦悩していました。

また、ファースト・オーダー艦隊から逃げるレジスタンスの艦内では、謹慎を命じられたパイロットのポー(演じるのはオスカー・アイザック=Oscar Isaac)や、かつてはファースト・オーダーの一員だったフィン(演じるのはジョン・ボイエガ=John Boyega)たちが、ひそかに追撃を振り切る作戦を練っていました。

こうした3つのストーリーを主軸に展開していくのですが、やはり幹となるのは、レイとルークの関係です。最初は頑なだったルークですが、素直というより愚直なまでに教えを請うレイに対し、だんだんと心を開いていく展開は、ロケ地であるアイルランドの厳しいが豊かな自然の情景によって、ルークの孤独が次第に癒されていくのを効果的に表現しています。

もちろん、他のエピソードも充分につくり込まれており、まるで3本の映画を1本に凝縮したかのような映画となっています。こうした作風は、やもすると観客に混乱をあたえてしまうことがありますが、監督・脚本のライアン・ジョンソン(Rian Johnson)の力量によって、その懸念はないと断言できるでしょう。

ジョンソン監督(脚本も)の前作「LOOPER/ルーパー」(Looper、2012年)も、タイム・トラベルを扱ったSF作品で、時系列が錯綜する作品でしたが、比較的スンナリと理解できる秀作でした。

「LOOPER/ルーパー」が長編3作目だったいうジョンソン監督にとって、だれもが知るSF超大作映画の監督と脚本を任されるというのは、「実際大きな決断だった」(パンフレットより)そうです。

脚本はキャラクターの掘り下げからはじめたそうです。
「キャラクターひとりひとりのことをじっくり考えたんだ。(中略)まずキャラクターありきでストーリーを構築していくと、自ずとアクションが生まれて、台詞が自然と湧き出てくるんだよ」(「映画秘宝」2018年1月号)

こうして生まれた本作にも、「フォースの覚醒」の監督/脚本で、本作では製作総指揮のJ・J・エイブラムス(J.J. Abrams)の語る「いつだって『スター・ウォーズ』は“家族”を描いていた」というシリーズのテーマは、しっかりと根を張っていました。

シリーズを通してレイアを演じ、本作が遺作となってしまったキャリー・フィッシャーによる、
「『スター・ウォーズ』は私にとってはファミリーね。ファミリー、家族についての物語。だからこそパワフルなの」(パンフレットより)
というコメントも、シリーズが家族を描き続けてきたことを補完しています。

本作と比較参照される、初期3部作の2作目「帝国の逆襲」(Star Wars: Episode5 The Empire Strikes Back、1980年)で、主人公ルークが敵役であったダーズ・ベイダーの息子だったという秘密の公開が、観客に巨大な衝撃をあたえたのに対し、本作には「謎」や「秘密」が多く残されており、またあらたな疑問も提示されています。

ひそかに感じているのですが、次回作(J・J・エイブラムス監督が復帰)では、これまでシリーズが築き上げてきた世界に、新たな家族の肖像が加わるのではないでしょうか。

けっして熱心なファンではない自分にも、こんなことを妄想させてしまう、本シリーズの深く広大な世界は、これほどの魅力に満ちているわけです。次回も未定とさせていただきます(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません。なお、ケイシーさんは現在、自宅療養中で、こんごの予定は未定になっています)。

編集注:ウイキペディアによると、「スター・ウォーズ(Star Wars)」シリーズは、ジョージ・ルーカス(George Walton Lucas,Jr)の構想を中心にルーカスフィルムが制作するアメリカのスペースオペラで、1977年に第1作「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」(Star Wars:Episode4 A New Hope、監督はジョージ・ルーカス)が公開された。

映画が「エピソード1/ファントム・メナス」(Star Wars:Episode1 The Phantom Menace)からではなく「エピソード4」から制作されたのは、1作目が商業的に成果を収めないとシリーズ化が厳しくなり、さらに一番「冒険活劇」としての完成度の高かったのが「エピソード4」で、これを最初に映画化することが得策だったためとされている。

また、「エピソード1・2・3」の時代は、全銀河の首都である大都市惑星コルサントの描写や、銀河共和国と分離主義勢力の間で起こった大規模戦争であるクローン大戦の描写が必須にも関わらず、当時の映像技術と予算では映画化が不可能であったことも原因となっている。

1980年に第2作「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」(Star Wars:Episode 5 The Empire Strikes Back、監督はアーヴィン・カーシュナー=Irvin Kershner)、1983年第3作「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」(Star Wars:Episode6 Return of the Jedi、監督はリチャード・マーカンド=Richard Marquand)で、この3作は「オリジナル・トリロジー(旧三部作)」と呼ばれている。

続いて、「プリクエル・トリロジー(新三部作)」が制作され、監督はいずれもジョージ・ルーカスで、1999年に4作目「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」、2002年に5作目「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」(Star Wars: Episode2 Attack of the Clones)、2005年に6作目「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(Star Wars:Episode3 Revenge of the Sith)が公開された。これにより、エピソード1から6までが完成した。

新たな3部作は「シークエル・トリロジー(続三部作)」とされ、ウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカスフィルム買収後に制作した、初の「スター・ウォーズ」シリーズの映画化である。

2015年に第7作目「スター・ウォーズ/フォースの覚醒(エピソード7)」(Star Wars:The Force Awakens、監督はJ・J・エイブラムス=Jeffrey Jacob Abrams)は「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」から30年後の姿を描いており、レイ(デイジー・リドリー=Daisy Ridley)の物語となっている。

こんご、2017年に「スター・ウォーズ/最後のジェダイ(エピソード8)」(Star Wars:The Last Jedi、監督はライアン・ジョンソン=Rian Craig Johnson)、2019年に「エピソード9」(同、監督はJ・J・エイブラムス)が予定されている。

編集注:レイア将軍を演じるキャリー・フィッシャー(1956-2016年12月27)は2016年12月23日にロンドンからロサンゼルスへ向かう飛行機内で心臓発作を起こし、到着したロサンゼルスの病院に緊急入院した。一時は一命を取り留め安定したと伝えられたが、12月27日に容態が急変し、死去した。享年60歳。

2017年12月公開の「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」にレイア・オーガナ役で出演し、これが遺作となった。2017年6月19日、キャリー・フィッシャーの遺体を検視した結果、その体内からは大量のアルコールと共に、コカインやMDMAなどといった薬物が検出され、検視によると、発作までの3日間、コカインを摂取していたことが判明している。