インド・オディシャ州は州首相の英断が救った(5)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年4月22日】当オディシャ(0DISHA)州は新型コロナ感染者数が現在(4月17日現在)までに60人(うち死亡1人、回復18人、41人のうち重症2人)だが、過去2日間ゼロで、5期連続政権を掌握して、21年目になるナヴィーン・パトナイク(Naveen Patnaik)州首相が改めて、辣腕ぶりを示した感じだ。

パトナイク・オディシャ州首相はニューヨークベースのライターとしての前歴(ケネディ家関連書ほか著書3冊)も持ち、1946年生まれで、「ビジュ・ジャナタ・ダル党」の党首でもある。亡父は自由独立運動闘士家で第3代目の州首相歴のあるビジュ・パトナイク(Biju Patnaik)。蝶のように優雅に舞い、蜂のように刺すと形容される巧みな人心掌握術でトップに君臨、汚職撲滅のクリーンなイメージで州民に絶大な人気を誇っている。ちなみに、亡父の名前はオディシャ州ブバネーシュワルにある国際空港の名称に使われている。

感染者が2人出た時点で迷わずロックダウン(都市封鎖)に踏み切った英断が功を奏して、インド全土の他地域に比べると、大健闘、首相自ら、当州は感染を抑えるのに成功しつつあると表明した。

昨年のスーパーサイクロン時も、死者を最小限に食い止め、州都の復旧を1週間内に果たした手腕が高く評価されたが、今回の危機においても、先見の明をもって臨み、州民の絶大な信頼を勝ち得ている。

「ホットスポット(レッドゾーン)」は、州都ブバネシュワールにおけるクルダ地方とバドラック地方の2地域で、現在、封じ込め政策をとっているが、過去1カ月間で感染疑惑のある5534人のうち、陽性は60人(1.08%)で、全国平均の5%をはるかに下回る最低の陽性率らしい。

非感染地域の「グリーン・ゾーン」は過去28日間陽性者が出ていなければ、4月20日以降若干措置が緩められる可能性も出ている。

ロックダウンも4月17日で27日目、前の道も、以前に比べ、人や車、バイク、自転車の行き来が目立つようになった。静まり返っていた初期に比べ、騒音も若干増え、夕刻になると、路上に繰り出す人の群れも目撃、とはいえ、予断は許さないが、今のところ、当地は平和で安全である。

プリー地方は37キロ離れたピプリ、アップリケ手工芸品で有名な小さな町で1人感染者が出たが、既に回復している。

感染力の強い毒性菌のため、油断すると、巻き返しが怖いが、ウイルスとの闘いに英知を持って、がぷと四つに取り組んでいる州首相は頼もしく、在留邦人の私ですら、誇らしく思う程だ。インド全土で感染者は急増、ロックダウン効果はどこへやら。

★著者の息子はムンバイベースのラッパー、ビッグ・ディール(Big Deal)として活躍し、最近はコロナ差別がテーマのラップもリリースした。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家でホテルを経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは感染していません。また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長しました。4月21日現在、インドの感染者数は1万7656人、死亡543人。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています)。