中央の百貨店8月、全5店マイナス、銀座三越と大丸半減続く

【銀座新聞ニュース=2020年9月2日】中央区とその周辺の主要百貨店の8月売上高(速報値、店頭ベース)は、日本橋三越、大丸東京店、日本橋高島屋、銀座三越、松屋銀座店の5店ともマイナスだった。5店舗とも前年を下回るのは7カ月連続となる。

8月の売上高でも前年比47.8%減と半減を強いられている銀座三越。

8月も新型コロナウイルスの感染防止のため、不要不急の外出を控える状況が続き、各店舗とも大幅なマイナスとなっている。ただ、オンライン(EC)の売り上げが「前年比約1.3倍」(三越伊勢丹ホールディングス)になるなど好調に推移しており、ラグジュアリーブランドも「ハンドバッグ需要が好調」(同)、「動きが見られた」(高島屋)、「改装効果や期間限定ショップの展開などにより堅調に推移」(J.フロントリテーリング)、「国内売上高が前年比約2割増」(松屋)など、全体を牽引しているようだ。

三越伊勢丹ホールディングスの日本橋三越(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は前年同月比28.1%減(7月速報値17.0%減、確定値16.6%減、小型店舗と恵比寿三越、ソリューション統括部を含む、確定値ベースでの店舗別売上額は2019年5月から未公表)と店頭ベースでは11カ月続けて前年を下回った。

一方、銀座三越(中央区銀座4-6-16、03-3562-1111)は同47.8%減(同速報値50.8%減、確定値50.8%減、但し空港型免税店の売り上げを除く)と7カ月続けてマイナスとなった。

三越伊勢丹ホールディングスでは、7月に引き続き、外出自粛影響から客数が伸びず、国内百貨店の売り上げは7月売り上げ(前年比)をわずかに下回ったが、大都市圏の店舗を中心に日本人顧客によるラグジュアリーブランドのハンドバッグ需要が好調としている。また、家の中を快適に過ごしたい買い替えニーズを背景にリビング、ダイニング家具が堅調な動きを見せている。

さらに、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店では、気温の上昇とともにビールなどの酒類や果物、涼菓が伸長し、おうちの中で夏休みを過ごす時間が増えたことにより、牛肉やウナギなどの少しぜいたくな食事を楽しむ傾向が高まったとしている。

また、オンライン(EC)売り上げは、新規商品の拡充や店頭でも人気の高い物産展や外国展特集の反響が大きく、前年比約1.3倍と好調に推移している。しかし、訪日外国人観光客売上高(インバウンド、免税売上高)は、先月から横ばいの状況が続き、前年実績を下回っているという。

日本橋高島屋(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は同13.6%減(同速報値17.9%減、確定値18.0%減)と7カ月続けてマイナスとなったものの、マイナス幅が7月よりも縮小した。日本橋店は2018年9月からレストラン街の運営を子会社の東神開発に移管し、百貨店としての売場面積が縮小している。

店頭売り上げは、訪日外国人観光客売上高の大幅な減少(88.4%減)に加え、外出を控える傾向や猛暑などの影響により前年実績を下回った。その一方で、自宅での時間をより快適に過ごすためのアイテムや、ラグジュアリーブランドなどに動きが見られた。

訪日外国人観光客売上高を除いた売り上げは13.2%減(7月15.0%減)となっている。商品別売上高(16店舗ベース)については、特選衣料雑貨、美術が前年を上回ったとしている。

J.フロントリテーリングの大丸東京店(千代田区丸の内1-9-1、03-3212-8011)は同48.5%減(同速報値46.3%減、確定46.0%減)と昨年10月の消費税増税以降、11カ月続けて前年を下回った。

新型コロナウイルスの感染再拡大や愛知県独自の緊急事態宣言により、外出の自粛傾向が強まったことから入店客数の回復が遅れ、ボリュームファッションや食料品を中心に苦戦したという。その一方で、ラグジュアリーブランドは改装効果や期間限定ショップの展開などにより堅調に推移し、前年並だった。

大丸松坂屋百貨店合計の訪日外国人観光客売上高(速報値)は同96.9%減(客数99.4%減、客単価413.8%増)だった。また、訪日外国人観光客売上高を除いた国内売上高は同21.1%減だった。

J.フロントリテーリングでは2017年4月から「不動産事業」を独立させて、確定ベースで伸び率を公表しており(速報値ベースは未公表)、7月の「ギンザ シックス(GINZA SIX)」や「上野フロンティアタワー」などの家賃収入は同8.7%減だった。不動産事業がマイナスとなるのは、5カ月連続となる。

松屋銀座店(中央区銀座3-6-1、03-3567-1211)は同36.7%減(同速報値40.0%減、確定40.0%減、4月は未公表だったが、5月の確定値段階で、4月が91.4%減と公表)と7カ月続けてマイナスとなった。

8月は、訪日外国人観光客売上高を除く売上高(国内の売上高)において、秋物新作入荷でラグジュアリーブランドの売上高(前年比約2割増)が牽引し、その結果、国内の売上高が前年比約1割減にまで回復している。加えて、外商(法人営業部)では、金製品やテレビ通販での大口特注により前年比2.2倍の大幅な伸びを示し、店頭外部門の売り上げも館全体を加勢した。

しかしながら、化粧品、宝飾・時計などを軸とした前年の訪日外国人観光客売上高が全体に大きく影響し、8月のクリアランスセールも1割減になるなどが要因となり、全体では前年を下回った。

日本百貨店協会(中央区日本橋2-1-10、03-3272-1666)によると、国内73社203店舗(総従業員6万1638人)の7月売上高(店舗調整後)は前年同月比20.3%減の3912億7719万円で、10カ月続けてのマイナスとなった。

7月は新型コロナウイルス感染再拡大による外出自粛、豪雨や長梅雨などの天候不順に加え、各社の集客催事中止や規模縮小の継続も影響したとしている。一方、生活必需品である食料品や衛生用品の他、上質・高付加価値需要も底堅く、ラグジュアリーブランドや時計、宝飾品などの高額品は健闘し、中元はECや電話受注が好調で、店頭の減少分をカバーし前年並みに推移したという。

地区別では、感染者数が再び急増した大都市(10都市)が23.3%減、地方(10市以外の地区)が12.7%減と、前月同様、地方に比べ大都市の減少幅が大きかった。

顧客別では、国内市場が16.1%減(10カ月連続、シェア99.2%)と前月より1.5ポイント減少した。訪日外国人観光客需要(インバウンド、免税売上高)は海外からの渡航者入国制限継続により88.7%減(31.7億円、6カ月連続、シェア0.8%)と依然として厳しい状況が続いている。

商品別では、ファッション商材がセールの前倒しや天候与件、コロナ影響による生産量低下・在庫不足などにより苦戦し、テレワークの拡大から外出機会が減少し、スーツ、ジャケット、パンプスなどビジネス関連も不振だった。これに対して、「新しい生活様式」の中で、精肉などの生鮮食品や和洋酒、包丁や調理家電などのキッチン用品、ホビーなど在宅時間をより楽しむ商材の他、マスク、エコバッグなどの必需品も動いた。また、各店では、デジタルを活用したオンライン接客や動画の配信サービスなど、新たな取り組みも進められている、という。

全国の百貨店の7月の営業日数は前年より0.1日減の30.8日、113店舗の回答によると、入店客は4店が増え、103店が減ったとし、83店舗の回答によると7月の歳時記(クリアランス、夏休み)の売り上げについては8店が増え、63店が減ったとしている。東京地区(12社25店)の7月の売上高(店舗調整後)は同27.9%減の982億5790万円と10カ月続けてのマイナスとなった。

国内90店舗の訪日外国人観光客需要の7月の売上高は同88.7%減の約31億7000万円と6カ月続けてマイナスとなり、国内の百貨店に占めるシェアが0.8%としている。

このうち、一般物品売上高は同89.1%減の約17億8000万円で、6カ月続けて前年を下回った。化粧品や食料品などの消耗品売上高が同89.1%減の17億8000万円、購買客数が同97.0%減の約1万3000人と6カ月続けてマイナスとなり、1人あたりの購買単価が同271.7%増の23万7000円で、8カ月続けて前年を上回った。

人気のあった商品は1位が化粧品(2018年1月から2020年6月まで1位)、2位にハイエンドブランド(2018年1月から2019年4月まで2位、5月3位、6月から2020年6月まで2位)で14カ月連続で2位、3位が婦人服飾雑貨(2018年1月3位、2月4位、3月3位、4月5位、5月3位、6月から2019年7月まで4位、8月3位、9月から5月まで4位、6月3位)で、2カ月続けて3位だった。

4位が食料品(3月、4月は6位以下、5月4位、6月6位以下)で2カ月ぶりに4位に戻り、5位が婦人服・用品(2020年1月から2月5位、3月6位以下、4月5位、5月3位、6月4位)でひとつ下げた。また、5位に子ども服・洋品が上がった。

免税手続きカウンターの来店国別順位は1位が中国本土(2018年1月から2020年6月まで1位)、2位は台湾(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と1月3位、2月2位、3月4位、4月3位、5月、6月2位)で3カ月で連続となった。

3位は6月に5位に下げた香港(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と1月2位、2月3位、3月2位、4月、5月4位、6月5位)が3位に上がった。

4位は韓国(2018年1月4位、2月から6月2位、7月3位、8月から10月2位、11月から2019年1月まで3位、2月から6月2位、7月4位、8月2位、9月から2月まで4位、3月3位、4月2位、5月3位、6月3位)で、ひとつ下げた。

同じく4位にマレーシア(2018年1月から1月まで7位、3月に6位、4月、5月5位、6月4位)がランクし、2カ月連続となった。6位は4月から4カ月連続でタイ(2018年1月から10月5位、11月と12月6位、2019年1月から8月5位、9月6位、10月から2月まで5位、3月7位、4月、5月、6月6位)だった。7位はシンガポール(2018年1月から10月6位、11月と12月5位、2019年1月から8月6位、9月5位、10月から2月まで6位、3月5位、4月、5月、6月7位)で、4カ月連続となった。