中央の百貨店9月、全5店とも減少幅拡大、増税前駆け込みの反動減

【銀座新聞ニュース=2020年10月2日】中央区とその周辺の主要百貨店の9月売上高(速報値、店頭ベース)は、日本橋三越、大丸東京店、日本橋高島屋、銀座三越、松屋銀座店の5店ともマイナスだった。5店舗とも前年を下回るのは8カ月連続となる。

9月の売上高でも前年比50.1%減と半減が続いている大丸東京店。

9月は新型コロナウイルスの感染防止のため、不要不急の外出を控える状況が続いている上に、昨年9月に消費税増税前の駆け込み需要があった反動減が見られたことで、マイナス幅が拡大した。また、訪日外国人観光客売上高(インバウンド、免税売上高)は依然として厳しい状況が続いている。

三越伊勢丹ホールディングスの日本橋三越(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は前年同月比36.1%減(8月速報値28.1%減、確定値26.6%減、小型店舗と恵比寿三越、ソリューション統括部を含む、確定値ベースでの店舗別売上額は2019年5月から未公表)と店頭ベースでは12カ月続けて前年を下回った。

一方、銀座三越(中央区銀座4-6-16、03-3562-1111)は同47.8%減(同速報値47.8%減、確定値47.8%減、但し空港型免税店の売り上げを除く)と8カ月続けてマイナスとなった。

同じく8月の13.6%減から9月には41.7%減と悪化した日本橋高島屋。

三越伊勢丹ホールディングスでは、増税前の駆け込み需要の反動減などでマイナス幅が拡大したが、引き続き、家の中で豊かに過ごしたい消費傾向から食料品や一部の店舗ではリビング家具やキッチン雑貨が健闘したという。

伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店では、8月と比較し入店客数がやや回復し、月の後半頃から気温が低下したことを受けて、一部秋物衣料や服飾雑貨にも動きが見られた。オンライン(EC)においては、ワインなどの食品の企画が好調だったことや店頭でも集客力のある外国展・物産展特集への反響が大きく、前年比約1.5倍と好調に推移したとしている。ただ、訪日外国人観光客売上高は、依然として低調に推移している。

日本橋高島屋(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は同41.7%減(同速報値13.6%減、確定値14.3%減)と8カ月続けてマイナスとなった。

昨年の増税前の駆け込み需要の反動減に加え、外出を控える傾向が続いていることや訪日外国人観光客売上高の大幅な減少により、前年実績を大きく下回った。訪日外国人観光客売上高は同92.8%減で、訪日外国人観光客売上高を除いた店頭売上高は同32.9%減だった。商品別売上高(15店舗ベース)については、すべての商品群が前年実績を下回った。

2018年9月対比では、店頭売上は14.9%減(既存店計13.4%減)、訪日外国人観光客売上高を除いた店頭売上高は8.8%減(同7.0%減)としている。

J.フロントリテーリングの大丸東京店(千代田区丸の内1-9-1、03-3212-8011)は同50.1%減(同速報値48.5%減、確定48.5%減)と昨年10月の消費税増税以降、12カ月続けて前年を下回った。

やはり増税前の駆け込み需要で売上高が大幅に増えた(大丸松坂屋百貨店32.8%増)ことの反動減に加え、コロナ禍における外出自粛により入店客数の減少の影響を受けた。

ただ、ラグジュアリーブランドや宝飾品は2017年実績を上回り、引き続き堅調に推移したという。大丸松坂屋百貨店合計の訪日外国人観光客売上高(速報値)は96.6%減(客数99.6%減、客単価775.8%増)だった。大丸松坂屋百貨店合計の国内売上高(訪日外国人観光客売上高の本年・前年実績を除く)は35.7%減(対2018年比14.3%減)だった。

J.フロントリテーリングでは2017年4月から「不動産事業」を独立させて、確定ベースで伸び率を公表しており(速報値ベースは未公表)、8月の「ギンザ シックス(GINZA SIX)」や「上野フロンティアタワー」などの家賃収入は同8.6%減だった。不動産事業がマイナスとなるのは、6カ月連続となる。

松屋銀座店(中央区銀座3-6-1、03-3567-1211)は同37.9%減(同速報値36.7%減、確定36.7%減、4月は5月の確定値段階で91.4%減と公表)と8カ月続けてマイナスとなった。

9月は昨年の増税前の駆け込み需要の反動減(前年比約15%減)があったが、松屋カード会員に向けた「松美会・秋の感謝祭」(9月4日、5日)においては、「イエナカ消費」や「巣ごもり需要」などを受け、家具家庭用品、寝具などの「新しい生活様式」を提案する商材が堅調に推移した。

また、コロナ禍における来店促進策としてライブ感溢れるイベント(「銀座・手仕事直売所」9月16日から22日)が活況を呈するなど各種施策が大きく牽引したとしている。訪日外国人観光客需要の動向がしばらく見通せない状況が続く中、引き続き、国内客の需要を見据えた商品提案と各種来店促進策が重要という。

日本百貨店協会(中央区日本橋2-1-10、03-3272-1666)によると、国内73社203店舗(総従業員6万1297人)の8月売上高(店舗調整後)は前年同月比22.0%減の3231億2485万円で、11カ月続けてのマイナスとなった。

8月は新型コロナウイルス感染拡大や記録的な猛暑から外出を控える傾向が一段と高まり、その上、各店の大型催事や夏休みイベントなどの中止・縮小が集客に大きく影響したとしている。ただ、シェアは低いもののEC売り上げは高伸しており、ネットでの取扱商品も徐々に拡がりが見られる。

また、人気の物産展などのオンライン開催も好評だったという。さらに、引き続き付加価値の高いラグジュアリーブランドや高級時計、宝飾品など高額品に動きが見られたとしている。

地区別では、地方(10都市以外の地区、11.2%減)が1.5ポイント改善したのに対して、外出自粛の傾向が高まった大都市(10都市、26.1%減)は2.8ポイントダウンし、その差(14.9ポイント)は7月より4.3ポイント拡大した。

顧客別では、訪日外国人観光客売上高は海外からの渡航者入国制限継続により86.1%減(35.5億円、7カ月連続、シェア1.1%)、国内市場は17.8%減(11カ月連続、シェア98.9%)となった。

商品別では、コロナ禍による帰省自粛により菓子関連を中心とした手土産需要が大幅に減少した一方で、イエナカ需要は依然として好調で、精肉や鮮魚、ビール、ワインなど酒類や、リビング・ダイニング家具、調理用品は健闘した。衣料品も、肌着やナイトウェアなどは堅調だったが、リモートワークからビジネス関連は苦戦が続いているという。

全国の百貨店の8月の営業日数は前年より0.2日増の30.6日、113店舗の回答によると、入店客は8店が増え、101店が減ったとし、84店舗の回答によると8月の歳時記(夏休み、お盆)の売り上げについては5店が増え、68店が減ったとしている。東京地区(12社25店)の8月の売上高(店舗調整後)は同25.4%減の819億9026万円と11カ月続けてのマイナスとなった。

国内90店舗の訪日外国人観光客需要の8月の売上高は同86.1%減の約35億5000万円と7カ月続けてマイナスとなり、国内の百貨店に占めるシェアが1.1%としている。

このうち、一般物品売上高は同86.4%減の約18億9000万円で、7カ月続けて前年を下回った。化粧品や食料品などの消耗品売上高が同85.8%減の16億6000万円、購買客数が同97.0%減の約1万1000人と7カ月続けてマイナスとなり、1人あたりの購買単価が同362.2%増の31万1000円で、9カ月続けて前年を上回った。

人気のあった商品は1位が化粧品(2018年1月から2020年7月まで1位)、2位にハイエンドブランド(2018年1月から2019年4月まで2位、5月3位、6月から2020年7月まで2位)で15カ月連続で2位、3位が婦人服飾雑貨(2018年1月3位、2月4位、3月3位、4月5位、5月3位、6月から2019年7月まで4位、8月3位、9月から5月まで4位、6月と7月3位)で、3カ月続けて3位だった。

4位が食料品(3月、4月は6位以下、5月4位、6月6位以下、7月4位)で、2カ月連続、5位が婦人服・用品(2020年1月から2月5位、3月6位以下、4月5位、5月3位、6月4位、7月5位)だった。

免税手続きカウンターの来店国別順位は1位が中国本土(2018年1月から2020年7月まで1位)、2位は台湾(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から2019年1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と2020年1月3位、2月2位、3月4位、4月3位、5月から7月2位)で、4カ月連続だった。

3位はマレーシア(2018年1月から1月まで7位、3月に6位、4月、5月5位、6月と7月4位)で、初めて3位に上げた。4位は韓国(2018年1月4位、2月から6月2位、7月3位、8月から10月2位、11月から2019年1月まで3位、2月から6月2位、7月4位、8月2位、9月から2月まで4位、3月3位、4月2位、5月3位、6月3位、7月4位)で、2カ月連続だった。

5位は香港(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と1月2位、2月3位、3月2位、4月、5月4位、6月5位、7月3位)が2カ月ぶりに下げた。

6位はシンガポール(2018年1月から10月6位、11月と12月5位、2019年1月から8月6位、9月5位、10月から2月まで6位、3月5位、4月から7月7位)で、順位をひとつ上げた。7位はタイ(2018年1月から10月5位、11月と12月6位、2019年1月から8月5位、9月6位、10月から2月まで5位、3月7位、4月から7月6位)で、順位を下げた。