過酷な状況を乗り越えた40年目の最終章「スカイウォーカーの夜明け」(280)

【ケイシーの映画冗報=2020年1月9日】明けましておめでとうございます。本年も映画の話題を提供させていただきます。

1977年、1本の作品が、それまでの“映画”の価値観を変えてしまいました。長編映画3作目のジョージ・ルーカス(George Lucas)監督が世界観を創造した「スター・ウォーズ(以下、SW)」(Star Wars)です。

現在、一般公開中の「スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け」((C)2019 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.)。

それまで映画だけでなく、あらゆるメディアで“お子さま向け”とされていたSF(サイエンス・フィクション)を、メジャーへと昇格させた大きなアクションは、「SW」シリーズの成功が大変に影響しているはずです。

1977年から本作「SW/スカイウォーカーの夜明け」までのシリーズ全9作と外伝2作品で、人間型の通訳用ドロイド(本作でのロボット)であるC-3POを演じたアンソニー・ダニエルズ(Anthony Daniels)は、「最初は本当にいろんなことをやらされて(当初は声だけでなく着ぐるみでも演じていた)、『これが大人の仕事なのか』と疑問をいだくようになっていた」そうですが、今では「もし、再び出演するチャンスをいただけるなら、もちろん演りたいね」(「映画秘宝」2020年2月号)と前向きな気持ちへと変化しています。

かつての銀河帝国の後継で、絶対的支配をめざす“ファースト・オーダー”のトップとなったカイロ・レン(演じるのはアダム・ドライバー=Adam Driver)は、さらに強大な悪の力を求めて銀河を探索し、各地に死と破壊をもたらしていました。

そのカイロに対抗できる強い“フォース(理力)”の持ち主であるレイ(演じるのはデイジー・リドリー=Daisy Ridley)は、“ファースト・オーダー”の猛攻に劣勢となった反乱軍の仲間から離れ、“フォース”を高める訓練に身を投じていましたが、反乱軍のリーダーで、カイロの母親でもあるレイア将軍(演じるのはキャリー・フィッシャー=CarrieFisher、1951-2016)から、ある任務を与えられます。

“死んだ銀河帝国皇帝の遺品”を仲間とともに探すレイの行く手に“ファースト・オーダー”の軍勢とカイロがあらわれます。じつはカイロもレイと同じものを求めていたのです。やがて、死んだはずの銀河帝国皇帝(演じるのはイアン・マクダーミド=Ian McDiarmid)の存在が、レイやカイロに感じられ、物語はクライマックスへ。

“フォース”の武器“ライトセイバー”を手にしたカイロとレイは、決戦の舞台で対峙することになります。

「SW」シリーズは、オリジナル(原作の存在しない)の映画作品としてもっとも成功したフランチャイズであるとされています。「SW」の世界は本作を含めた合計11本の長編映画だけでなく、テレビアニメやゲーム、小説やコミックなど、数多く存在します。

これだけ多岐に及ぶエピソードのすべてを1本の映画に集束させ、問題なく完結させることが不可能なのは十分に理解できます。そのためか、2015年に謎多き女性・レイが主人公となった「SW フォースの覚醒」からの新たな3部作は、ファンから寄せられた批判的なコメントや、監督の交代(本作も当初の監督が降板し、「フォースの覚醒」を監督したJ・J・エイブラムスに変更)、重要なキャラクターを演じたキャリー・フィッシャーの急死(2016年に心臓発作で)といった、公開の延期や、あるいは作品そのものが中止となってもおかしくない、過酷な状況に直面していました。

とくに、“レイの物語”の中枢で製作・監督・脚本(共同)のJ・J・エイブラムス(J.J.Abrams)には、相当のフレッシャーがあったことは想像にかたくありません。

「(本作は)単に『フォースの覚醒』から始まる今回の3部作における結末ではなく、9作品のための最終章なんだ。当然そこには、ありとあらゆる考慮しなければならないことがたくさんあった」(パンフレットより)

「SW」世界のエピソードやキャラクター、設定は膨大な質と量であり、すべてのファンの期待にもれなく応える作品を1本の映画にまとめ上げるというのは、不可能といってもいいでしょう。

では「SW」の本質とは一体なにか。先述のアンソニー・ダニエルズによる、このコメントにシリーズの歴史は集約されていると思います。
「1976年、チェニジアの撮影初日から、私は『SW』の世界にいた。こんなにも長く続いているなんて、大したものだ。40年以上にも及ぶ長い道のりは、本当にすごい道のりだよ」(パンフレットより)

そういえば、芸暦60年という、ある役者さんが、俳優業を続けられた理由をこう述べていました。「(俳優を)やめなかったこと」。次回は「ジョジョ・ラビット」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:「スター・ウォーズ」全体については2017年12月28日の「【ケイシーの映画冗報】(228)」の注意書きを参照してください。