中央の百貨店6月、全5店減も日本橋2店は17%減に改善

【銀座新聞ニュース=2020年7月2日】中央区とその周辺の主要百貨店の6月売上高(速報値、店頭ベース)は、日本橋三越、大丸東京店、日本橋高島屋、銀座三越、松屋銀座店の5店ともマイナスだった。5店舗とも前年を下回るのは5カ月連続となる。

6月の売上高が前年比17.9%減まで改善した日本橋高島屋。

6月は新型コロナウイルスの感染防止のため、不要不急の外出を控える状況が続き、各店舗とも大幅なマイナスとなった。ただ、「買い物の目的が明確なお客や購買意欲が高いお客が多く、多くの店舗において客単価は前年実績を上回」(三越伊勢丹ホールディングス)ったせいか、日本橋三越と日本橋高島屋はマイナス幅が大幅に改善した。

また、訪日外国人観光客売上高(インバウンド、免税売上高)については、入国制限の強化などが響いて、各店とも大幅に落ち込んだ。高島屋全店では訪日外国人観光客売上高が前年比94.2%減、大丸松坂屋百貨店全店では同97.1%減となっている。

三越伊勢丹ホールディングスの日本橋三越(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は前年同月比17.1%減(5月速報値90.5%減、確定値88.0%減、小型店舗と恵比寿三越、ソリューション統括部を含む、確定値ベースでの店舗別売上額は2019年5月から未公表)と店頭ベースでは9カ月続けて前年を下回ったものの、大幅に改善した。

一方、銀座三越(中央区銀座4-6-16、03-3562-1111)は同45.3%減(同速報値95.4%減、確定値95.4%減、但し空港型免税店の売り上げを除く)と5カ月続けてマイナスとなった。

三越伊勢丹ホールディングスではほぼ全店で客数が減少し、国内百貨店合計の売上高が前年を下回った。一方で、買い物の目的が明確なお客や購買意欲が高いお客が多く、客単価は前年実績を上回り、売上高は5月よりも大幅に改善した。特に食品、リビング用品、子ども用品など「日常生活をより豊かに過ごしたいニーズに応えるカテゴリーが健闘」したという。

東京都心の店舗では、月初は生活必需品へのニーズが中心だったが、徐々にラグジュアリーブランドや宝飾品など、高額品の比較検討が可能な百貨店ならではのニーズも上向いてきたとしている。また、混雑を避ける目的で分散化して開催したクリアランスセールも、月の終盤まで堅調に推移した。さらに、6月9日に刷新した三越伊勢丹オンラインの売上高は月を通して好調だったとしている。

首都圏、札幌、名古屋、福岡など訪日外国人観光客売上高のシェアが高い地域では、訪日外国人観光客売上高の大幅マイナスが売上減の大きな要因としている。

日本橋高島屋(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は同17.9%減(同速報値61.8%減、確定値61.5%減)と5カ月続けてマイナスとなったが、マイナス幅が改善した。日本橋店は2018年9月からレストラン街の運営を子会社の東神開発に移管し、百貨店としての売場面積が縮小している。

店頭売り上げは、夏セールを段階的にスタートしたが、引き続き外出を控える傾向や、店内外催事の中止、訪日外国人観光客売上高の大幅な減少の影響などにより、前年実績を下回った。とくに訪日外国人観光客売上高は同94.2%減だった。

ただ、中元は、オンライン売り上げが好調で、前年並で推移しているが、商品別売上高(16店舗ベース)については、すべての商品群が前年を下回った。

J.フロントリテーリングの大丸東京店(千代田区丸の内1-9-1、03-3212-8011)は同49.8 %減(同速報値87.4%減、確定87.4%減)と昨年10月の消費税増税以降、9カ月続けて前年を下回った。

百貨店事業は6月14日まで短縮営業を継続したが、5月30日から土・日曜日の営業を再開し、15日以降はほぼ通常通りの営業時間となったこともあり、大丸松坂屋百貨店合計では同28.0%減、関係百貨店を含めた百貨店事業合計では29.0%減と5月よりもマイナス幅が縮小した。大丸松坂屋百貨店合計の訪日外国人観光客売上高(速報値)は97.1%減(客数同99.2%減、客単価同243.9%増)だった。

J.フロントリテーリングでは2017年4月から「不動産事業」を独立させて、確定ベースで伸び率を公表しており(速報値ベースは未公表)、5月の「ギンザ シックス(GINZA SIX)」や「上野フロンティアタワー」などの家賃収入は同61.1%減だった。不動産事業がマイナスとなるのは、3カ月連続となる。

松屋銀座店(中央区銀座3-6-1、03-3567-1211)は同37.2%減(同速報値91.3%減、確定91.3%減、4月は未公表だったが、5月の確定値段階で、4月が91.4%減と公表)と5カ月続けてマイナスとなった。

銀座店は、6月は月間を通して営業時間を短縮(売上全体への影響度合いは8.5%減)、6月において2回の全館休業日を設け(2.8%減)、前年同月より土・日・祝日が2日減(0.7%減)、国内移動の自粛による入店客数の減(4割程度の減)などの要因により、売上高はマイナスとなった。

訪日外国人観光客売上高は渡航規制で大幅に縮小した中、化粧品(国内客の売上高前年比3.9%減)や、ラグジュアリーブランド(同8.1%増)など、自家需要商材や固定客を軸としたカテゴリーは堅調に推移した。

6月26日からスタートしたクリアランスセールについては、前年に対して4割程度の売上(プロパー比率は7割程度)で推移している。一方で、法人営業部(外商)において、テレビ通販などの特注が奏功し、売上高が前年比で75%増になるなど、店頭以外の取り組みでは全体を加勢したとしている。

日本百貨店協会(中央区日本橋2-1-10、03-3272-1666)によると、国内73社203店舗(総従業員6万1669人)の5月売上高(店舗調整後)は前年同月比65.6%減の1515億4248万円で、8カ月続けてのマイナスとなった。

5月は新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の下、全国の会員店が営業自粛を余儀なくされたが、月の後半からは宣言の段階的解除を受けて、順次各店の営業再開が進んだ。これにより、月初から中旬まで前年を大幅に下回っていた売上高減少率も、最終的には過去最大を記録した4月(72.8%減)から若干(7.2ポイント)改善した。

地区別では、地方(10都市以外の地区)が56.8%減、営業自粛の影響が大きい大都市(10都市)は69.0%減と、その差は拡大し12.2ポイントとなった。

訪日外国人観光客需要(インバウンド、免税売上高)は、入国規制や臨時休業による免税カウンター閉鎖等を背景に、売上高が97.5%減(7.7億円、4カ月連続、シェア0.5%)、購買客数99.3%減(4カ月連続)と、依然厳しい状況が続いている。一方、国内市場は63.2%減(8カ月連続、シェア99.5%)と7.4ポイント改善した。

商品別では、外出自粛で巣ごもり消費の傾向が強まり、食料品(45.2%減)やライフスタイル関連(家庭用品:54.9%減)が相応に健闘し、生鮮三品や惣菜、和洋酒、生菓子、寝具、キッチン・リビング用品、家電なども動いた。

また、衣料品(74.1%減)や身のまわり品(74.5%減)等のファッション商材では、羽織物、ブラウス、カットソー、パラソル、帽子などに動きが見られた。春のお祝いニーズからギフト関連も堅調だった。その他、増勢が続くネット通販など非店頭売上は好調で、業績を下支えしている。

全国の百貨店の5月の営業日数は前年より4.8日少ない26.0日、114店舗の回答によると、入店客は7店が増え、104店が減ったとし、83店舗の回答によると5月の歳時記(GW、母の日)の売り上げについては6店が増え、71店が減ったとしている。東京地区(12社25店)の5月の売上高(店舗調整後)は同71.6%減の347億9525万円と8カ月続けてのマイナスとなった。

国内90店舗の訪日外国人観光客需要の5月の売上高は同97.5%減の約7億7000万円と4カ月続けてマイナスとなり、国内の百貨店に占めるシェアが0.5%としている。

このうち、一般物品売上高は同97.2%減の約4億5000万円で、4カ月続けて前年を下回った。化粧品や食料品などの消耗品売上高が同97.9%減の3億2000万円、購買客数が同99.3%減の約3200人と4カ月続けてマイナスとなり、1人あたりの購買単価が同268.8%増の24万1000円で、6カ月続けて前年を上回った。

人気のあった商品は1位が化粧品(2018年1月から2020年4月まで1位)、2位にハイエンドブランド(2018年1月から2019年4月まで2位、5月3位、6月から2020年4月まで2位)で12カ月連続で2位、3位が婦人服・用品(2020年1月から2月5位、3月6位以下、4月5位)が5位から上がった。

4位が婦人服飾雑貨(2018年1月3位、2月4位、3月3位、4月5位、5月3位、6月から2019年7月まで4位、8月3位、9月から4月まで4位)で、同じ4位に食料品(3月と4月6位以下)が復活した。

免税手続きカウンターの来店国別順位は1位が中国本土(2018年1月から2020年4月まで1位)、2位は3月に4位、4月に3位に上がった台湾(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と1月3位、2月2位、3月4位、4月3位)がさらに上がった。

3位は韓国(2018年1月4位、2月から6月2位、7月3位、8月から10月2位、11月から2019年1月まで3位、2月から6月2位、7月4位、8月2位、9月から2月まで4位、3月3位、4月2位)がひとつ下げた。

4位は香港(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と1月2位、2月3位、3月2位、4月4位)と、4月に続いて2カ月連続4位だった。

5位は、2018年から2020年2月まで7位、3月に6位、4月に5位に上がっているマレーシア(2018年1月から1月まで7位、3月に6位、4月に5位)で、2カ月連続となった。6位は3月に7位、4月に6位だったタイ(2018年1月から10月5位、11月と12月6位、2019年1月から8月5位、9月6位、10月から2月まで5位、3月7位、4月6位)で、2カ月連続で6位となった。7位は3月に5位、4月に7位だったシンガポール(2018年1月から10月6位、11月と12月5位、2019年1月から8月6位、9月5位、10月から2月まで6位、3月5位、4月7位)で、2カ月続けて7位だった。