丸善日本橋で川瀬巴水「新版画」展、小原祥邨らも

(記事の一部は4月25日から27日まで開かれる「東京アートアンティーク2019-日本橋・京橋美術まつり」と重複しています)
【銀座新聞ニュース=2019年4月24日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は4月24日から30日まで3階ギャラリーで「新版画の美-川瀬巴水木版画展」を開く。

丸善・日本橋店で4月24日から30日まで開かれる「新版画の美-川瀬巴水木版画展」に出品される「東京十二題 五月雨ふる山王」(1920年)。

日本の浮世絵版画を復興するため新しい浮世絵版画「新版画」を確立した、近代風景版画の第一人者として知られる川瀬巴水(かわせ・はすい、1883-1957)が1910(明治44)年に日本画家の鏑木清方(かぶらき・きよかた、1878-1972)に入門を許され、本格的に画業に取り組み、1918(大正7)年に風景版画を制作して以来、600点も残している。

そのうち、世界中から集められた作品の中から1906年に創業した渡辺木版美術画舗(中央区銀座8-6-19、03-3571-4684)の目で厳選された30点余りの初期摺り版画を展示即売する。近年、注目されている小原祥邨(古邨、おばら・しょうそん・こそん、1877-1945)をはじめ、川瀬巴水と同世代の新版画作品も展示即売する。

「アートスケープ」によると、2013年12月15日に放送されたNHK「日曜美術館」でアメリカ・アップル・コンピュータ社の創業者、スティーブ・ジョブズ(Steven Paul “Steve”Jobs、1955-2011)が新版画、とくに川瀬巴水作品のコレクターであったことが紹介されたという。

スティーブ・ジョブズは1983年、28歳のときに銀座の画廊で川瀬巴水や橋口五葉(はしぐち・ごよう、1881-1921)の版画を購入し、1984年にアップルが初代マッキントッシュを発表した際に、そのプロモーション写真の3台のコンピュータのうち、中央の画面には、橋口五葉の版画「髪梳ける女」(1920年)が写されていたという。

単行本「最後の版元 浮世絵再興を夢みた男・渡辺庄三郎(わたなべ・しょうざぶろう、1885-1962)」などによると、スティーブ・ジョブズは渡辺木版美術画舗や兜屋画廊(中央区銀座8-8-17、伊勢万ビル、03-3571-6331)などで川瀬巴水らの作品を購入していたという。

ウイキペディアなどによると、「新版画」は1897(明治30)年前後から昭和時代に描かれた版画のことで、江戸時代に流行した浮世絵版画が1894(明治27)年の日清戦争を描いた戦争絵の一時的なブームを最後に、急速に力を失い、廉価な石版画、写真、大量印刷の新聞、雑誌、絵葉書などといった新商品の人気に押され、売れ行き不振となり、衰退していった。

そのような中で、従来の浮世絵版画と同様に、絵師、彫師、すり師による分業の制作方式に興味をもったのが、1899(明治32)年に来日したヘレン・ハイド(Helen Hyde、1868-1919)や1900(明治33)年に来日したエミール・オルリック(Emil Orlik、1870-1932)ら外国人だった。

その後、橋口五葉らが新版画に着手し、日本画家のみならず、洋画家や外国人作家の参画によって、1923(大正12)年に発生した関東大震災以前の新版画がもっとも華やかで、実験的な作品を生み出す時代を迎えた。それらは現代的なデッサンの美人画、役者絵、陰影のある風景画や花鳥画などが描かれたという。

川瀬巴水は1883(明治16)年東京都生まれ、10代から画家を志して日本画を学び、1908年に25歳で父親の家業を継ぐが、画家になる夢を諦めきれず、妹夫婦に商売を任せて日本画と洋画を学んだ。1910年、27歳で日本画家の鏑木清方に入門し、「巴水」の画号を与えられる。

1918年に風景版画を制作し、1920年に「旅みやげ第一集」を完成、1921年に「東京十二題」と「旅みやげ第二集」を完成、1923年に関東大震災で被災しながらも、1926年に「日本風景選集」、1929年に「旅みやげ三集」、1930年に「東京二十景」、1936年に「日本風景集東日本編」を完成させた。

1939年に「朝鮮八景」を完成させ、1944年には栃木県塩原に疎開、1948年に東京都大田区内に引越し、1957年に自宅で胃ガンのため74歳で死去した。衰退した日本の浮世絵版画を復興すべく、新しい浮世絵版画である新版画を確立した人物として知られる。

アメリカの鑑定家ロバート・O・ミューラー(Robert O.Muller、1911-2003)の紹介によって欧米で広く知られ、国内よりも海外での評価が高く、浮世絵師の葛飾北斎(かつしか・ほくさい、1760-1849)や歌川広重(うたがわ・ひろしげ、1797-1858)らと並び称されるほどの人気がある。

26日と27日の14時から渡辺木版美術画舗の3代目経営者、渡辺章一郎(わたなべ・しょういちろう)さんによるトークギャラリ-を開く。

開場時間は9時30分から20時30分(最終日は17時)まで。入場は無料。

注:「渡辺木版美術画舗」と「渡辺章一郎」の「辺」は正しくは旧漢字です。名詞は原則として常用漢字を使用しています。