コロナ禍に楽しめる2大怪獣スターの全面対決「ゴジラVSコング」(319)

【ケイシーの映画冗報=2021年7月8日】昨年の初頭から顕著化した新型コロナウィルスの影響は、本当に世界規模、かつ広範囲な影響をおよぼしています。日本の音楽や演劇、映画、美術などの収益は、2020年は前年の2019年に比べ、公演や展示による収入において50%から80%も減少しているそうです。

なんどかの延期を経て、ようやく7月から公開されている「ゴジラVSコング」((C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.&LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.)。制作費が1億6000万ドル(約160億円)から2億ドル(約200億円)。興行収入が4億2717万ドル(約427億1700万円)。

映画産業もダメージは深刻で、4月の「緊急事態宣言」によって映画館が約2カ月の休業となり、さらに新作の公開延期や中止の影響により、史上最高だった2019年の年間興収2611憶8000万円から、ほぼ半減した1432憶8500万円へと落ち込んでいます。

本作「ゴジラVSコング」(Godzilla vs. Kong)も昨年11月の公開予定が延期となり、海外では今年の3月から劇場公開がスタート、日本も5月14日の予定でしたが、「宣言」によって再延期、ようやく7月2日の劇場公開となりました。

前作「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(Godzilla: King of the Monsters、2019年)でのゴジラ対キングギドラの激闘がゴジラの勝利に終わってから3年。破壊された世界は復興への道を歩んでいました。

巨大生物を監視する研究機関「モナーク」は、キングコングを隔離施設で保護していました。太古からのライバルであるゴジラから隠し、両雄の対決を避けるためでした。そのゴジラが突然、アメリカに上陸、巨大企業エイペックス社の研究施設を破壊しつくします。

人間に敵対することがなかったゴジラがなぜ、暴れ出したのか。ゴジラの破壊衝動のカギは、エイペックス社の巨大モンスターに関わる極秘研究と、キングコングの生まれ故郷である、地球内部の巨大な地下空間にありました。エイペックス社は地球内部の空洞に厖大なエネルギー源があることを突き止め、それを独占し、ある巨大なプロジェクトを完成させようとしていたのです。

死力を尽くすゴジラとコングの一大決戦は、エイペックス社の秘密工場のある香港ではじまります。そこにはゴジラの憎悪の対象となったあるものが。

モンスター映画の始祖といえる世界8番目の不思議(劇中のコピー)「キング・コング」(King Kong、1933年)を観た円谷英二(つぶらや・えいじ、1910-1970)が生み出したのが水爆大怪獣映画(オルジナルポスターの文字)の「ゴジラ」(1954年)でした。

「ゴジラ」が世界的な人気となり、日本で「キングコング対ゴジラ」(1962年)が作られます。ゴジラとキングコング、ともにはじめてのカラーでの劇場用作品でした。

「約三十年前、怪獣の元祖として又トリック映画の草分けとして誕生した米国のキングコングは、今も伝説として大人の胸にも子供の胸にも生きています。そして近代怪獣の傑作として世界中で大喝采を受けた日本のゴジラ。この世界の二大怪獣を対決させる夢は三年前から計画されましたが、このほど米国からキングコングの版権を買い取り、実現を見たものです。全世界のファンに贈る、最新、最高、最大の巨篇です。」(公開時のプレスシート)

第2次世界大戦(1939年から1945年)の敗戦から20年たらず、アメリカの人気キャラクターを買い取った(実際には5年間の限定使用権でしたが)という、誇らしさも感じさせる文面に、当時の関係者の勢いが感じられます。

この作品の本編を担当した本多猪四郎(ほんだ・いしろう、1911-1993)によると、この2大怪獣の対決には、あらたなメディアとして大きく伸びていた、テレビ界の動向が盛り込まれていたそうです。

「怪獣同士の戦いというものを、視聴率競争の対立の中に描いた」ことで、本多はこのことに批判的に描いています。「視聴率や何かに惑わされて作ったものはダメです。作る方がそういう圧力にどうやって対抗して、自分が本当に作りたいものを作るか」という批評的な姿勢であった一方、映画作りに関しては「ただただ如何に面白く描くかという事だけだった」(東宝SF特撮映画シリーズVOL.5)という気持ちであったそうです。“本当に作りたいもの”を“面白く描く”どちらもエンターメイメントの根幹ということでしょう。

テレビの視聴率や印刷物の発酵部数だけでなく、ネット社会の現代では動画の再生数や閲覧数、“いいね”のクリック数など、暴走や過剰さを引き起こしかねない“数字”が増えているのが現実です。

ゲームも含めれば娯楽のコンテンツも増え続けています。冒頭のようにきびしい環境に、映画をはじめとしたエンターメイメント界が直面しているのが真実ですが、いろいろな作品で人類は絶対の危機を乗り越えてきています。

もちろん、現実はシナリオどおりに進むことはありませんし、ハッピーエンドが約束されてもいませんが、いっとき、強大2大怪獣スターの全面対決を楽しみ、気分転換をするのも良いことですよ、たぶん、きっと、必ず。次回は「ファイナル・プラン」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。