銀座M84で林敏弘「風と光」展、ピンカメで

【銀座新聞ニュース=2018年11月3日】Art Gallery M84(中央区銀座4-11-3、ウインド銀座ビル、03-3248-8454)は11月5日から17日まで林敏弘さんによる写真集発売記念展「『風と光の記憶』-モノクローム・ピンホール写真」を開く。

アートギャラリーエムハッシー(Art Gallery M84)で11月5日から17日まで開かれる林敏弘さんの「風と光の記憶」に展示される「サンセット・ベイ(Sunset Bay、夕陽の港)」((C)Toshihiro Hayashi、税別8万円)。林敏弘さんが初めてピンホールカメラで撮影し、衝撃を受けた作品だ。

ピンホール写真家の林敏弘(はやし・としひろ)さんが10月20日に「風と光の記憶」(前田朋=まえだ・とも=さんが編集、ヴィッセン出版、税別1600円)を刊行したのを記念して、1998年秋からモノクロームで撮影した作品を、写真家自らがゼラチンシルバーでプリントした約40点を展示する。

林敏弘さんが1枚の写真が将来にわたって多くの人に「記憶」されることを願って、出逢った光景を素直な気持ちで1枚1枚を大切に撮った作品で、ゆったりと流れる時間が写り込み、人の心を癒してくれるような魅力的作品としている。

林敏弘さんによると、ピンホールカメラはレンズの代わりに小さい穴が前面に開いていて、そこから入る微かな光でフィルムなどの感光体に画像を作るカメラで、1枚撮るのに晴天の戸外で10数秒から数分露出にかかる。屋内や夜景では数十分から数時間かかることもある。

とくに林敏弘さんの使うピンホールカメラはただの木製の箱で、ファインダーもなく、画面構成も全く勘で、「とても不便なカメラ」としている。しかも、その後に面倒な暗室での現像やプリント処理を経て、どんな写真が撮れたのかが分かる。

そんな不便なカメラを使い続けている理由は、ピンホールカメラのよさがわかったからだ。秋の夕方、初めて作ったピンホールカメラを持って、地元船橋の港にテスト撮影に行き、翌日現像すると大半は失敗だったが、1枚は助かっていた。その画像を見た瞬間に強い衝撃を受けた、という。

今回、発売する写真集の表紙「サンセット・ベイ(Sunset Bay、夕陽の港)」で、以前から何度もレンズカメラで撮っている場所で、ピンホール写真の違いか直ぐに分かった。「なんと気持ちのよい光の柔らかさだろう」と思ったのだ。露出に数分かかったからか、雲も光も流れているし、ボートも揺れてぼけている。

だからこそ、あの場所のあの時の空気、風や夕陽の暖かさや音までも再現してあった。「こんな写真は見たことがない」。林敏弘さんの写真家としての人生を変えてしまった瞬間だった。

ウイキペディアなどによると、ピンホールカメラ(pinhole camera)とは、レンズを使わずに針孔(ピンホール)を利用したカメラで、「針孔写真機」ともいう。構造が簡単で容易に作れるため、中学校の物理の授 業において実験のため作られることが多い。単純なピンホールカメラは、箱の中の一面に感光素材を貼り、反対面にピンホールを開けるだけ。

ピンホールを通り 抜けた光は、感光素材上に像を結び、露光時間さえ十分であれば、現像によって像を得ることができる。箱の内部は黒く塗るなどして、内部での反射を押さえる ことが望ましい。また、像を得るためには感光素材だけでなく、感光する素材であれば何でもよく、CCDイメージセンサなども使える。

ピンホールカメラには焦点距離という概念はなく、調節する機構が存在しない。はっきりした像を得るためには、ピンホールの大きさは、一般的に0.2ミリから 0.5ミリぐらいが使われており(感光素材の大きさによって異なる)、光量を得られにくいので、通常のカメラと比較すると、長い露出時間を必要とし、1秒から数時間、場合によっては1日くらいまで露出することがある。また、近いものから遠いものまでボケないで撮影できる。

林敏弘さんは 1954年千葉県船橋市生まれ、1977年に早稲田大学理工学部物理学科を卒業、事務機器メーカーに入社、1983年に学生時代から中断していた写真撮影を再開、1988年にモノクローム写真を独学し、1998年からピンホールカメラで撮影し、作品を制作、2007年にピンホール写真芸術学会理事、 2014年に日本写真協会会員。

1999年に第20回船橋市写真展第1部モノクロ単写真の部門最優秀賞(市長賞)、2000年にカナダの 「ミレニウム・フォト・プロジェクト・タイム・カプセル・ウイナー(Millennium Photo Project Time Capsule Winner)、2002年に第13回美術工芸作家協会展で美術工芸作家協会最優秀賞を受賞している。

開場時間は10時30分から18時30分(最終日は17時)まで。入場は無料。日曜日は休館。会場では写真集を販売する。