M84で3代目阿部「盆栽」と江口「能の美学」コラボ展、デモも

【銀座新聞ニュース=2019年1月8日】Art Gallery M84(中央区銀座4-11-3、ウインド銀座ビル、03-3248-8454)は1月10日から12日の3日間、江口敬さんと阿部大樹さんによる写真と盆栽の2人展「松・美・心」を開く。

アートギャラリーエムハッシー(Art Gallery M84)で1月10日から12日の3日間、開かれる江口敬さんと阿部大樹さんによる写真と盆栽の2人展「松・美・心」に展示される作品((C)eguchi_takashi/M84)。

開園90年以上の歴史を持つ福島の老舗の盆栽屋「あべ」の3代目、阿部大樹(あべ・たいき)さんが「吾妻五葉松(あづまごようまつ)」盆栽をアート作品として展示する試みで、「あべ」は五葉松を種一粒から育て、自分たちが仕立てた盆栽を自ら進んで売ることはしてこなかった。

2016年「TIFA(東京インターナショナル・フォト・アワード)」ファインアート部門で金賞を受賞している写真家の江口敬(えぐち・たかし)さんが「能」に由来する「見立て」による作品を「風姿(ふうし)」と題して作品を発表しており、その「風姿」から選定した、とりどりの色とわずかな線とが組合わさったイメージ「見立て」によるアート作品と盆栽とのコラボを含め約20点を展示する。生きている盆栽を展示することから、3日間限定となる。

研ぎ澄まされた感性と空間の美を感じさせる「あべ」の吾妻五葉松と、写真とも絵画とも違う描き方する江口敬さんの作品「風姿」は、「空間有美」や「見立て」という観点から共通点があり、また、江口敬さんの撮影した盆栽の写真が「あべ」の表現したい世界を捉えていたことから、「いつか東京で、二人展を開きたいね」ということから今回の展示会となった。

橋本正則さんによると、「能」に由来する「見立て」とは、「あるものを別のものになぞらえることで、2つの異なる対象の間に新たな橋を掛けることで、鑑賞者の内的イメージを時間的にも空間的にも拡張する方法論と言える」としている。

ウイキペディアによると、五葉松は日本原産のマツ科マツ属の樹木で、樹高が15メートルから20メートルほどで、もっと大きくなることもある。樹冠は円錐型だが、老齢の個体では扁平であり、不規則に生長する。

雌雄同株であり、一つの個体に雄しんだけを持つ雄花、雌しんだけを持つ雌花の2種類の花をつける。雄花はピンク色で大きさは7ミリから10ミリ、花粉は風で運ぶ風媒花である。毬果(松かさ)が熟すのは2年目の終りで、毬果は大きさが4センチから7センチの卵型で、はじめは緑色だが、熟すと茶色に変わり、鱗片を開く。種子は大きさ1センチほどで2ミリから10ミリほどの翼を持つ。

日本では吾妻五葉松(福島市)、那須五葉松(那須地域)、四国五葉松(四国中央市)が園芸産地として盛んで、「日本三大五葉松」に挙げられる。本種は盆栽にするのに人気のある樹種で、庭木としてもいくつかの種類が開発されている。同じく盆栽に用いられるアカマツやクロマツなどと比べても樹齢が長く、暑さにも寒さにも強いことが特徴で、成長による変化が緩やかな点も特徴として挙げられる。

江口敬さんは1972年東京都三鷹市生まれ、1995年に学習院大学法学部政治学科を卒業、学生時代に能(仕舞と謡)の稽古にいそしんだ経験を持ち、仕事の傍ら、独学で写真を学び、2008年から作品を発表、主に仙台市、福島市、東京都内のギャラリーで個展を開いている。現在、福島県福島市在住。

阿部大樹さんは1980年福島県福島市生まれ、大学を卒業後、盆栽の道をめざして神奈川県の盆栽園で5年間修行し、帰郷し、「あべ」の3代目となり、現在、父親の2代目、阿部健一(あべ・けんいち)さんとともに、祖父で皇居の盆栽も手がけた故阿部倉吉(あべ・くらきち)が提唱した「空間有美」に基づく作風を追求し続けている。

海外では「アベスタイル(ABE STYLE)」と呼ばれ、スイスやフランスなどで盆栽指導を行っている。初代の阿部倉吉の「むやみに売ってはならぬ」との教えをいまも受け継いでいる。

11日15時から阿部大樹さんによる五葉松盆栽作りのデモンストレーションを開く。要予約で先着20人まで(03-3248-8454)。また、当日は自ら手入れできる人限定で、持ち帰りできる大きさの盆栽を特別に販売する予定。

開場時間は10時30分から18時30分(最終日は17時)まで。入場は無料。