大丸松坂屋画廊で丸尾末広展、「少女椿」扉絵再現、カリガリ生稿も

【銀座新聞ニュース=2024年6月13日】国内百貨店業界2位の流通グループ、J.フロントリテイリング(中央区八重洲2-1-1)傘下の大丸松坂屋百貨店(江東区木場2-18-11)が運営するアートギャラリー「Artglorieux GALLERY OF TOKYO」(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3572-8886)は6月13日から19日まで丸尾末広さんによる個展を開く。

大丸松坂屋百貨店の「Artglorieux GALLERY OF TOKYO(アールグロリュー ギャラリーオブトーキョー)」で6月13日から19日まで開かれる丸尾末広さんの個展に出品される「少女椿」の扉絵(シートのみ、silkscreen on paper Ed.120)。

マンガ家、イラストレーターの丸尾末広さんは1980年代のデビュー以来、「耽美的かつ猥雑なエッセンスが織りなす透徹した美意識を提示し」(Artglorieux GALLERY OF TOKYO=アールグロリュー ギャラリーオブトーキョー)ており、「その際立った独自の世界観は日本国内だけではなく世界中に多くの支持者を生み出し、色褪せることなく世代を超え観る者を魅了」しているという。

今回は、長い間、行方のわからなかった「少女椿」の扉絵をシルクスクリーンで再現した版画や「カリガリ博士復活」(1982年に「マンガ宝島」3月号に掲載、1982年の青林堂の短編集「薔薇色ノ怪物」に収録)の生原稿をはじめ、初公開となるカラー原画、エスキースなど約20点を展示販売する。

ウイキペディアによると、「少女椿」は丸尾末広さんが月刊マンガ誌「漫画ピラニア」(辰巳出版)の1981年8月号に掲載した同名の読切作品「哀切秘話 少女椿」(短編集「薔薇色ノ怪物」に収録)を経て、司書房の官能劇画誌「漫画エロス」で1983年8月号から1984年7月号まで全8話が連載された。

番外編として前日譚を描いた「少女椿 水子編」(白夜書房「ヘイ!バディー」1984年2月号掲載、短編集「キンランドンス」収録)と「少女椿 予告編」(ビデオ出版「メロンCOMIC」1984年8月号に掲載、単行本未収録)がある。「月刊漫画ガロ」を発行する青林堂から1984年9月に単行本化され、「ガロ系」と呼ばれる日本のオルタナティヴ・コミックの中でも評価や知名度がずば抜けて高い作品のひとつとしている。1992年にアニメ映画として原田浩さん(別名絵津久秋)が監督、演出、台本、作画で制作し、公開された。

上映にあたっては紙吹雪や発煙筒、スモークなどの仕掛けによる特殊な演出が施され、神社境内や地下室でゲリラ興行された。通常の映画館で上映する場合は、映倫指定の約26カ所を削除した上でぼかしを加えた「映倫通過版」のフィルムを用いる必要があり、これにR指定(R15+)をつけるよう定められている。

1999年にスペインのマラガのエステポナで開かれた「サン・セバスチャン・ホラー&ファンタジー映画祭(現在は「エステポナ国際ファンタスティック&ホラー映画週間」)」で上映され、終了後に成田税関でマスターフィルムが没収後破棄され、国内輸入および日本国内で上映禁止となる。

その後、「東京国際ファンタスティック映画祭2004」でファン投票1位を獲得し特別上映されるが、警察の要請で以降8年間上映が禁止された。解禁後は倉庫から再発見されたオリジナルネガから作成した16ミリフィルムのニュープリント版がカナザワ映画祭で上映されている。

マンガ作品としては、浪花清雲作の街頭紙芝居「少女椿」を脚色したもので、「貧しい家の少女が両親と生き別れ苦難を経て幸せを得る」という、戦後昭和の時代に流行した母子不幸ものによくある筋書きを根底とし、「生き別れた母親と失踪した父親と再会し両親そろって幸せに暮らす」という幸せな結末を迎える紙芝居版に対し、マンガ版では丸尾末広さんならではのエログロ・怪奇性を押し出した作風で終始暗い雰囲気が漂い、結末も後味の悪いものになっているとしている。

丸尾末広さんは1956年長崎県生まれ、中学卒業後、16歳で東京に上京し、印刷業などを経て、17歳で「週刊少年ジャンプ」に作品を持ち込むも作画が週刊誌のスタイルに合わないとの編集者の指針により不採用となった。1980年に「エロス’81 劇画悦楽号2月号増刊」(サン出版)に「リボンの騎士」でデビューし、以降、小説のさし絵などを描く傍ら「漫画エロス」や「ガロ」(1964年から2002年頃まで青林堂が刊行していたマンガ誌)を中心に作品を発表した。

一時期活動中断を経て、2007年に月刊マンガ誌「コミックビーム」(KADOKAWA)に江戸川乱歩(1894-1965)の「パノラマ島綺譚」を完全マンガ化した作品の連載をはじめ、2008年の単行本化を経て、2009年に同作品で朝日新聞社の「手塚治虫文化賞」新生賞を受賞した。2014年5月よりwebマガジン「ぽこぽこ」にて肖像画を依頼できるサービスに参加している。2020年10月より京都のGallery SUGATA(ギャラリー・スガタ)にて画業40周年を記念した原画展「NEXT ONE(ネクストワン)」を開いている。

開場時間は10時30分から20時(最終日は18時)まで。