【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2021年3月26日】3月13日現在、インド西部のマハラシュトラ州(Maharashtra、人口1億14000万人)の感染が再拡大しており、新規数は1万5817人と急増、累計228万人(死者5万2723人)で、実質陽性者も一時期10万人台以下に落ちたのに、16万人と再上昇、懸念される状況だ。
息子こと、Rapper Big Deal(左から2人目)は、パンデミックをものともせず、ラップスターとして旺盛に活動中、先般は州都で人数制限のライブショー、今は新作動画の撮影に飛び回っている。
公式発表では、変異株によるものでなく、人々の警戒心の緩みを原因にあげている。が、インド全体(累計1130万人、実質30万人、死者15万8000人)も新規数2万人台(2万4882人)に上がり、今後の推移が危惧される。
一方、ワースト2位で第3波中だったケララ州(Kerala、累計109万人、新規数1780人、実質4万人、死者4369人)は、減少傾向、しかし、3位以降のカルナータカ(Karnataka、累計95万8000人、新規833人)、アンドラプラデシュ(Andhra Pradesh、累計89万1000人、新規210人)、タミルナドゥ(Tamil Nadu、累計85万8000人、新規670人)とも若干増加、他にパンジャブ(Punjab)、グジャラート(Gujarat)も増えている。
なお、世界では、変異株が急再拡大しているブラジル(累計1140万人、新規数8万5663人、死者27万5000人)が、インドを抜いて2位に帰り咲いた。ここ10日ほどこの分では、インドを抜くなと注視していたが、予想以上に早かった。
トップは、依然アメリカ(累計2940万人、新規数6万4177人、死者53万2000人)だが、致死率では、ブラジルの方が上回る。イギリスの対人口比死者数も高い(累計425万人、新規6609人、死者12万5000人)。
当オディシャ州(Odisha、人口4600万人)は、ぶり返し州からの旅行者を警戒、空港では検疫強化中だが、列車で訪れる旅客は、監視が万全に行き届かず、野放し同然になっているようだ。他州からの入域者がウイルスを持ち込んでの再拡大が危惧される。
現状では、実質651人(累計35万8000人余、死者1918人)、新規数64人と、未だ抑制下にあり、当地プリー(Puri)はほぼ正常化、マスク派は僅少だ。
そこのけ、そこのけ、お牛様が通る。インドでは、牛は神さま、コロナどこ吹く風で、悠々と我が物顔に路地を行く。
インド全土のワクチン回数は、2820万回に達したが(アメリカの9820万回、中国の5266万回に次いで3位)、英アストラゼネカ(Astrazeneca)製のワクチンが血栓などの副作用で一部のヨーロッパで接種中断されていることが、今後インドにどう影響を及ぼすかが懸念される。
米ファイザー(Pfizer)製のワクチンは、変異株にも効くというが、インドで用いられているのは、アストラゼネカ製のコビシールド(Covishield)と、国産のバーラト・バイオテック社(Bharat Biotech)のコバキシン(Covaxin)だ。
12日に行われた日米豪印のオンライン首脳会談(クアッド=Quad、4カ国戦略対話)では、インドが他3カ国の支援のもとに来年末までに100億回分のワクチンを製造するとの取り決めがなされたが、中国を牽制する意図があることはいうまでもない。同4カ国は、定期的に合同軍事演習も行っており、昨年11月には、ベンガル(Bengal)湾のマラバール(Malabar)海岸で日本の海上自衛隊も参加しての共同訓練が実施された。
インド政府は、中国との国境地帯での小競り合いの平和的解決に向けて話し合いを進めているが、昨年6月、45年ぶりに兵士に死者が出ただけに、事態収拾は容易でないようだ。インド側としても、中国は商取引上欠かせない存在で、両大国の経済的利害の大きさからも、下手に刺激はしたくなく、バランスを取るのが難しいところ。いずれにしろ、パンデミック(世界的流行)下、無用な争いは極力避けたいところだが、中国の軍事行動加速化には抜け目なく、目を光らせている。
さて、私個人は、インドでワクチンを受けるつもりはないが、なぜかと言うと、副作用のみならず、感染リスクもあるからだ。医療インフラが脆弱な田舎州なので、PCR検査の間違いも稀でない。
つい最近も、検査ミスが発覚し、教育機関でのクラスター(感染者集団)は、間違いだったことが発覚したばかりだ。PCR検査そのものが100%正確とは言えないようだし、過去嫌というほど誤診体験があるだけに、現地の医療機関には極力、近づきたくない。
11日は、シバ神(Siva)のお祭りだったが、こういう宗教的行事になると、信者が大勢集まるため、州政府は厳重に警戒、人数制限や、マスク着用、ソーシャルディスタンス遵守の規制を改めて敷いた。
当ホテル街は、週末はローカル旅行者で賑わうが、一部の地域が第2・3波襲来で外出規制が敷かれていることから、今後の客足の鈍りが懸念される。ぶり返しが全土どこまで拡大するか、今しばらく、事態を静観することが必要のようだ。
★極私的動画レビュー/「イタリアガイドみめ」の観光案内
もっぱら動画にハマっている昨今、ドラマや映画のみならず、旅・食関連から占いまで、アトランダムに楽しんでいる。さて、今回は、イタリアのフィレンツェ(Firenze)で20年ガイドに携わる日本女性の観光並びにコロナルポをご紹介したい。
その名も片庭みめさんは、イタリア男性と結婚した一女の母だが、日本人御用達のガイド歴20年の現地語ペラペラのベテランでもある。パンデミック下イタリアの観光産業が大打撃を食らっているのはいうまでもないが、みめさんはめげずに、お洒落なラメ入り布マスクと、イタリア仕込みのファッションで、観光客のいない閑散とした花の都、フローレンス(Florence)をライブでツアーガイドする。
ライブは1時間以上と長いので(20分前後の短めの編集動画もあり)、イタリアに行ったことがあるか、興味のある人でないと、疲れるかもしれないが、有名観光地の店が閉まって閑散とした様子を生で知るには貴重だ。
現在、フィレンツェは変異株の拡大で再ロックダウン(都市封鎖)、死者もイタリア全土で10万人を超えている。ガイド業も上がったりだろうが、愛嬌ある茶目っ気たっぷりに、オンラインで視聴者をバーチャルツアーへといざなってくれる。
ちなみに、私は学生時代ヨーロッパ一周ツアーの一環で、イタリアを訪れたことがあり、美しい花の都・フローレンスはとても気に入って、留学したいと焦がれたほどだった。ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)や、アルノ河(Arno)にかかる屋根付き橋、ポンテベッキオ(Ponte Vecchio)をそぞろ歩きながら、大きなソフトクリームを舐めたことが今も、思い出に残っている。
もし、フィレンツェに留学していたなら、イタリア男性と結婚していたこともありえ、パラレルワールドのもう1人の自分を見る思い、ただガイドではなく、情報発信のフリーランスに携わっていたと思うが。フィレンツェはそんな、我が青春のアルカディア(Arcadia、理想郷)、なのである。
後年インドで民宿を経営するようになって、フローレンス在住という若い日本女性が泊まったことがあったが、「きれいすぎると、飽きる」と漏らしていたことが印象に残っている。毎日見てると、あまりに美しすぎて飽きるというのは、何となく納得がいった。その点、インドは清濁併せ飲む混沌さ、エキサイティングで面白いかもしれない。
現実には、30年以上も居座ると、辟易するくらいうんざり、飽きるを通り越しているのだけど。
(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。
また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は2020年3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。
2021年3月16日現在、世界の感染者数は1億2024万6451人、死亡者数が266万1194人、回復者が6820万0139人です。インドは感染者数が1140万9831人、死亡者数が15万8856人、回復者が1102万7543人、アメリカ、ブラジルに次いで3位になっています。
ちなみにアメリカの感染者数は2949万5420人、死亡者数が53万5628人(回復者は未公表)、ブラジルの感染者数は1151万9609人、死亡者数が27万9286人、回復者数が1019万5598人です。日本は感染者数が44万9318人、死亡者数が8645人、回復者が42万7345人(ダイヤモンド・プリンセス号を含む)。インドの州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。
また、インドでは2020年3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。
ただし、インド政府は2020年5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。編集注は筆者と関係ありません)。